何故だか、お互いが叶わない恋に悩んでいたあの日がとても懐かしく思える。

 あの時はただ、〝仲間〟が出来て嬉しかったんだよな。



「……でも今は、30はあたしにとってのラッキーナンバーだと思ってるの」


「えっ?」


 叶恋の言葉の意味が分からなくて、聞き返しながら叶恋の顔を見た。




「だってね、透とあたしの身長って30センチ違うんだよ?」


「ああ……」


 いつか、叶恋の身長を聞いた時、驚いてしまったのを今も覚えている。


 俺は180センチで叶恋は150センチ。

 丁度30センチだ。


 叶恋はこれでも頑張ったと頬を膨らませていたっけな。



「それで、この間まで二人とも30歳年上の人に恋してたなんていう共通点もあるし!これって、運命だと思うの」

 ふふっと叶恋は楽しそうに笑う。


「意味分かんねー」

 なんて言う俺だけど、本当は俺も同じことを思っていたりするんだ。



「……まあ、どんな理由にしろ、30はあたしのラッキーナンバーだよっ」


 叶恋はそう言うと徐に立ち上がり、隣に立て掛けてあったほうきを手に取った。


 そしてくるっと俺の方を振り返ると、

「もうすぐ夏休みだからねっ!いーっぱい遊ぼうね」

 子供みたいなことを言う。



 でも、確かにもうそんな季節だ。