あれから、あいつがどうしたのかは分からない。
でも、あの日までは何も気にしてなかったんだ。
むしろ、池の前で泣いてたことなんて忘れていた。
でも、1週間くらいしてから母親が俺に言ったんだよな。
『ねえ、池の前で毎日女の子が泣いてるのよね。透(とおる)、知ってる子?』
『何の話だよ。ごちそうさまでした。じゃあ、行ってきます』
なんで俺の知り合いになんだよ。
女嫌いだって知ってるはずだろ?
例外は、〝あの人〟だけだし。
鞄を持って、玄関へと向かった。
『だってあの子、透の学校の制服着てたのよ?』
同じ高校なだけだろ。
そいつが池の前で泣いてるなんて、どうでも……。
あれ?
なんか知ってるような……?
『だからって、知り合いとは限らないだろ』
『そう。……でも、毎日うずくまって泣いてるのよね。いじめ、かしら』
うずくまってる……?