でも、また俺は止まってしまった。


 逆に、さっきよりも後ろに下がってしまった。




『え、嘘だろ……?』


 俺は口を手で覆ったまま、何度も瞬きをした。


 あの女、泣いてねぇか……?





 俺は恐る恐る、また角から、覗くようにあいつを見た。



『う……ヒック』


 あー、やっぱりな。



 鼻をずるずる鳴らしてるし、嗚咽のようなものも出ている。




 え、マジで分かんねぇ。



 なんであいつ泣いてんの?


 ってか、なんでここなんだよ……。




『掃除出来ねぇ……』


 これじゃ、話しかけられないじゃねぇかよ。


 あーあ、夕方はゲームしようと思ってたのに。



『最悪だ。』



 俺はため息をつきながら、ほうきを持ってきた道を戻って行った。