「ヒック……ヒック…」



 池の前にうずくまる女を、俺は角から見ていた。



 あぁ、またか。


 毎朝、毎朝、よくも飽きないよな。













 彼女を見るようになったのは、一ヶ月くらい前からだ。


 その日は、週に一回の池掃除の日だった。


 いつもは夕方にするんだけど、その日はなんとなく朝にしようと思い、俺は池に向かっていた。


 しかし俺は、角を曲がれば池、という所で立ち止まってしまった。



『何かいる……?』


 何かの音が聞こえる。



 猫か?

 よく来るんだよな、猫。


 けれど、その予想は違ったようだ。



 ちらっと池の方を覗いてみると、そこには猫よりも大きい影があった。



『……女?』



 俺は、驚いてしまった。

 池の前で、肩にかかるくらいの髪の女が一人でうずくまっていたからだ。