すると泉田は体を起こし、こちらに近づいて来る。



「……ちょっと話、いいか?」


「…………。」


「…中庭に行こうか」


 俺は何も言わなかったが、俺が了承したことを感じ取った泉田はそう言った後、中庭に向かって歩き出す。

 俺は黙って、ただ泉田の後をついて行った。



「いやぁ、それにしても今日は日差しがすごいなぁ」


「……そうっすね」


 まだ春だけど、今年は例年よりも暑い。

 だからか降りかかってくる強い日差しは、やっぱり俺の心に合わない。


 中庭は下駄箱から真っ直ぐ行ったすぐのところにあるため、本当に一瞬で着いた。






「……で、なんすか」


 中庭には誰もいなくて、静寂が俺らを妙な雰囲気で包む。



「まあ、そう急かすなよ」


「……じゃあ、世間話でもしますか?」



 別に、俺自身が泉田と何かあったわけではないが、でも叶恋が傷ついている理由がこいつにあることを知っているからだろう。

 少し冷たい言い方になってしまう。



 泉田に否はない。


 でも、興味もない女に「彼氏いるの?」とか聞くとか可笑しいだろ。

 ただの生徒だって思ってるなら、あんま優しくすんなって。

 なんとも思ってないなら、変に期待させてやんないでほしい。