「えっ?そんなの、だってこの前聞いただろ?彼氏いんのー?って」


「ああ……でも、その時透の名前は出てなかったじゃないですか」


 それに、いるなんて一言も言ってない。




「俺の中では彼氏=速水だったからさ」


「え……?なんで?」


「だってこの前、駅に二人でいたじゃん。仲良さそうだったし。」


「……それ、だけ?」


「え?うん、それだけ」



 センセイは、あたしのことどう思っているんだろう。

 きっとセンセイにしたら、生徒の好きな人知ったぜ!くらいの気持ちなんだろうか。


 あたしって、ただの生徒なんだね。


 ……どこまでいっても。

 生徒って区切りから先には、一歩も入れないんだ。




 いきなり突き付けられた現実に、胸が痛くなった。


 それに、センセイの中の彼氏が透だってことも。

 今は、あんまり透のこと考えたくないのに……。


 少し、視線を下に向ける。



 あーあ、思い出しちゃったよ。



 透といた、楽しい時間を。

 透と過ごした、大切な時間を。


 最後の、最悪な別れまで。

 くっきりと。