「これな、嫁が買ってくれたんだ。俺の誕生日プレゼントだってさ」


 そう自慢げに、幸せそうに話すセンセイを見て、また胸がチクリと痛んだ。



 ……嫁が、買ってくれたんだ。

 幸せって、こういうことを言うんだろうな。


 当たり前のような幸せ。

 それこそが、一番の幸せ……。




「へぇ、奥さんとラブラブなんだねっ」


「ははっ、まあな」


 嬉しそうにはにかむセンセイ。

 ああ、聞かなきゃ良かったなんて、少し後悔。


 もしセンセイの家が上手くいっていなかったら、あたしは幸せだったのかな?

 嬉しいのかな?

 でも、センセイの悲しい顔は見たくないから。


 センセイが幸せだと辛くて、センセイが不幸だと悲しくて。

 どっちにしろ、同じなのかも。



「そっかそっか、良かったねー」


「なに婆さんみたいなこと言ってんだよ。いくつだよ、お前」


「ピッチピチの16でーす!」


 あたしは笑顔で、ピースした。

 センセイも、くすっと笑う。



「……あ、そういえば。お前はどうなの?」


「え?あたし?」


「そう。速水とどうなんだよ」