本当に、勢いだった。

 今思えば、そんなに怒ることじゃなかったのに。


 勝手にムカついて、透を傷つけるようなことを言ってしまった。

 透が苦しんでいること、分かってたのに。


 なにが、〝幸せ〟だ。

 なにが、〝愛されてる〟だ。


 なんで、そんなこと言っちゃったんだろう。

 最低なのは、あたしだ……。



 センセイと一緒にいる朝の時間よりも大切な時間に、今やっと気付いた。

 大切な居場所に、今、やっと。




「透っ……」

 腕に、涙が染みていく。


 いつだってあたしを優しく包んでくれていたのに。

 一番の理解者で、いつも思ってくれていたのに。


 そんな大事な透を、あたしは傷つけたんだ。

 失って、しまったんだ。




 出来るなら。

 出来るなら、時を戻したい。


 出来るなら。

 出来るなら、謝りたい。


 ごめんなさい、って。

 嘘だよ、って。



「……それが、出来たら」


 それが出来たら、どんなにいいだろう……。