段々ヒートアップしていく喧嘩。



「違うよ!!だって透のお母さんが透を見る目、いっつも優しいもん!ああ、愛されてるんだなって手に取るように分かったよ!それに透のお母さん、あたしに言ったんだよ。無愛想で冷たく見えても優しい子だって!」


「……っ!」


 あたしは、あんなに素敵な親子愛を見たことがない。


 透は、お母さんに想われている。

 それじゃあ、ダメなの?


「ねえ、愛の形が違ってもさ、愛されてるってだけじゃダメなの?透、ずるいよ。あたし、なんて……」


「……お前には、」


 少し悲しくなって下を向いていると、透が小さくそう口にした。

 あまりに小さくて、あたしは聞き返す。


「えっ?」


「……お前なんかに俺の気持ちが分かるかよっ!!」


 そう言った透の声は、今までで一番大きくて、一番切なそうだった。

 そしてそのことに驚いているあたしを、透はキッと睨んだんだ。


 初めて見る透のその表情はとても恐かったけど、あたしだって引けない。



「……っなにそれ!透にだってあたしの気持ち、分かんないじゃん!」


「ああ、分かんねえよ。ばっかみたいに毎日泣いてるお前の気持ちなんてな!」


「ハア!?」


「だってそうだろ?教師なんておっさんじゃん。30歳年上?はっ、笑わせんなってーの」


「透だって30歳も年上の母親好きになってんじゃん!」


「それはっ……母さんは別なんだよ」


「あたしだって、センセイはまた違うもんっ」