~叶恋Side~
透の家にお邪魔した日から、二日が経った。
今日もいつも通り5時起きで化粧をして、ほとんど誰もいない道を歩く。
いつもと変わらない重い足取りも、切ない胸の痛みも、もう慣れっこだ。
駅のホームに行くと、ほら。
ビシッと決めた似合わないスーツ姿の愛しい影が見える。
ふふっ、やっぱり変わらないな。
あたしは少しニヤけ気味にゆっくりと背後から近づき、
「後ろ、今日も、はねてますよ」
「ぅわぁぁ!」
センセイは今日もいつも通り、大きなリアクションを見せた。
毎日毎日受けてるんだから、いい加減慣れるはずなのになぁ……。
なんて呆れるけれど、やっぱり何処か嬉しい。
「毎回引っ掛かって、馬鹿みたい」
「っ!……うっせえよ」
あたしは笑いながら、センセイの隣に並ぶ。
毎朝、この時間と場所だけが、あたしの居場所。
「ったくー、毎朝毎朝、脅かしやがって」
先生は少し怒ったような顔をする。
でもね、あたしには効かないの。
むしろ逆効果だよ。