~センセイSide~




 いつも通り、帰ろうとホームで電車を待っていた時だった。



「でね、でね!昨日の……」

 そんな聞き覚えのある元気な声に振り向くと、そこには櫻井が楽しそうに笑っていた姿があった。


 こんな可愛い笑顔を見たことがない俺は、驚きながら自然とその隣に視線を移した。


 ……そこには。

「ああ、あれか。確かに面白かった」


 櫻井に優しく微笑みかける、確か1組の〝速水透〟がいた。


 速水って確か、女嫌いだったよな……?

 教師の俺でも知ってるくらいめっちゃモテてるのに、今まで一度も女と話しているのを見たことがない。


 そんなあいつが、櫻井と楽しそうに喋ってる……。

 櫻井も、あんな笑顔見たことないぞ……。




 二人は全く気付いていないようで、笑顔で手を振りながら櫻井が電車に入って行く。

 速水も、笑顔で「またな」なんて言って見送っている。


 俺も急いで電車の中に入るが、頭の中はパニック状態だ。




 そんな俺が導き出した結論。



 もし、かしたら。

 二人は、そういう仲なのか……?



 生徒の秘密?を知った俺は、ちょっとニヤついてしまった。


 そうかそうか。

 なんだ、櫻井も彼氏がいたのか。


 ふと、高校生の時の今の奥さんとの甘酸っぱい恋を思い出した。

 そして二人の姿を当時の俺らと重ね合わせ、ちょっと微笑ましく思った……。