「……っ」


 驚いた。

 でも、あまりにも温かい透の腕によって、すぐにあたしは落ち着く。



「……ありがとう、叶恋」


「うぅ……なんも、してないよ。なんも、できてないよ」


「ううん、その思いだけで十分だよ」


「優しいね、透は」


「その言葉、そっくりそのままお前に返すよ」



 透の腕に、力がこもる。


 酷い現実も、悲しい想いも。

 全て全て、忘れられる気がした。



















「……行こっか」


「うん……」


 少しして、泣き止んだあたしをそっと透は自分から離し、また、同じ歩幅で駅へと向かう。

 駅にはすぐ着いて、二人でホームで電車を待っていた。


 どうやら透は、あたしが電車に乗るまで見送るつもりらしい。