好き、なの。

 だから、相手にも好き、って思ってほしい。



 言葉なんて、簡単に出せるんだから。

 思ってもないことだって、平気な顔して言えちゃうんだから。


 だからね、何度も嘘ついてるといつの間にか自分でも本当の気持ちが消えたと思っちゃうの。

 でも、本当は消えてなんかいない。

 ずっとずっと変わらない。


 どれだけ他人に嘘ついたって。

 どれだけ自分に嘘をついたって。


 想いが届いてほしいっていう思いは。

 恋が叶うようにっていう願いは。

 変わっては、くれないんだよ。



 ねえ、透。

 貴方は、どうですか?





「……叶恋」


「ご、めんっ……近所迷惑だよね……」



 思いの丈を全て言葉にしたあたしは、涙を必死に右腕で拭いながらそう言った。


 笑おう。

 笑わないと、やっていけないよ。



「も、もうここでいいや。……じゃ、じゃあ」


 そう言って、再び歩き出そうとした時、

「………叶恋」

 もう一度落ち着いた声であたしの名前を呼んだ透は、





 あたしを、抱きしめた。