〝馬鹿〟なんて言葉で済ますには、あまりに純粋で透明すぎるんだ。


 目から、涙が一つ、零れ落ちた。


 なんなんだろうか。

 こんなにも真っ直ぐ想っているのに。

 どうしてこの世界はこんなにも、あたし達に冷たいんだろう。




「………叶恋、なんで泣いてんの」


「だって……こ、んなの、酷過ぎるよぉ。透は、あたしは、ただ恋、をしてるだけな、のにっ」




 どうして?


 先生に恋をするのは、母親に恋をするのは、そんなにいけないこと?


 口にしてるわけじゃ、ないんだよ。

 思いを伝える気も、ないんだよ。

 なのに、なのに……。


 どうしてこんなにも、酷い仕打ちをしてくるのですか?

 ねえ、神様。あなたのことですよ。



「報われない恋……なんて、要らないよ。ねえ、透、そうでしょう?本当は、本当はっ」


 立ち止まったあたしは、俯きながら声を震わせていた。

 目から零れた沢山の涙が、地面を濡らしていく。


 透もきっと立ち止まったのだろう。

 斜め前に、透の足が見える。



「……この想いが叶ってほしいって思ってるでしょっ!!」

 あたしにしては珍しく、気付けば声を荒げていた。


 何で覆い隠したって変わらないんだよ。

 理屈なんかで封じ込めたってさ、一緒なんだよ。