透は愛されてるんだな。
そう、素直に思った。
例えそれが、単なる〝家族愛〟だったとしても。
きっと、透のお母さんは透を誰よりも愛している。
あたしも、生徒としては愛されてるのかもしれない。
でも、センセイの一番、ってわけじゃないのだ。
だけど、それは透の望んだ愛じゃないから。
どんなに大きい愛だったしても、透にとっては所詮〝要らない愛〟なのかもしれない。
もしかしたら、その愛のせいで、透は傷ついているのかも。
だけど、愛されているっていうのは変わらない事実だろう。
「………知っています」
あたしは、例え叶わなかったとしても透の恋がきちんと幸せに実を結ぶことを祈りながら、そう言って微笑んだ。
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「……ありがとうな」
透の家を出て、駅のホームに向かう途中。
透が突然、ぽつりと言葉を放った。
その意味を聞かなくても分かっているあたしは、コクッと頷く。