「鈴矢に巻きついたモノを、引きちぎって頂けますか?」
引きちぎる?これを……?!
……どうしよう。正直、気が引ける。
如月姉弟は別として、自分以外に見えていないモノ。
きっとこれは、現実的には…存在していないものなのだと思う。
しかし無駄にリアリティに溢れている。
何だか異臭さえしてきそうな程に………。
植物が腐って、ぬめりをおびてそうなソレに触るのは…ちょっと嫌だ。
などと戸惑っていると、眉間に皺を寄せた奏が不機嫌そうに口を開いていた。
「ちょっと待て。それって絵真に負担はないんだろうな?」
「今、正に、鈴さんを苛んでる災いを受ける事になるだろうね」
さも当然とばかりに言い捨てた綾人の言葉に、奏は自嘲気味に笑った。
「どうりで…。客間じゃなくて絵真の部屋なわけだ。絵真がぶっ倒れるの前提の負担か。運ぶ手間が省けるもんな。ほんと用意周到で吐き気がするよ」
これが先程、奏が問いただしてきた[この部屋の意味]の答えなのか。
如月の2人は、鈴矢の身体に纏わりつくコレは災いだという。
そして私に、ソレを取り除いて欲しいと望んでいるのか。
「元はと言えば籠女である時近から滲み出た災いだろ」
「雪…!もうほんとお前は……っ!!」
痛みに顔を歪ませた久世君が、咄嗟に額を押さえる。
天音君の言う通りだ。
これが私の身から滲み出た災いだというならば、返して貰わねばならない。
心配してくれる奏には申し訳ないのだが、負担など生きているだけで否応なく受ける身なのだ。むしろ今回は、これから訪れる苦しみに対し覚悟が持てるだけ有難いとさえ思う。
だから私の懸念は別のところにあった。
椿の姫を通さずに、直接私が災いに触れていいものなのだろうか。
もし引きちぎる事が出来ず、事態がもっと悪い方向にいってしまったら?
「心配しないで。災いが完全に染み付いても、それ自体で死ぬ事はないんだ」
身を前に乗り出し私の顔を覗き込んだ綾人君は、そう言うと珍しくニコッと微笑んだ。
「そういうものなの?」
もしかしたら綾人君なりの気遣いなのかもしれない。
きっと彼は[失敗を恐れるな]と励ましてくれているのだろう。
「ただ死んだ方がマシだって苦しみが延々と続くわけだからー…自ら命を絶つだろうけど」
………全然違った。
一体、どこらへんが[心配しないで]なのだろうか。
結局、最悪の事態には変わらないではないか。
私は1つ大きな溜息をつくと、正面に座る久世君を真っ直ぐに見詰める。
「私、やってみようと思う。どうすればいいか…わからないけど」
頼りない言葉にも関わらず、久世君は優しく笑ってくれた。
「オレも…どうしたらいいかわからないんだ。だから時近さんに託す事にする」
「うん」と小さく頷く。
そろそろと手を伸ばすと、両肩に温かい感触が訪れた。
きっと奏が肩を支えてくれているのだろう。
その温かさに励まされる様に、更に手を伸ばす。
私の指先が、災いの鎖に触れた。
熱い?!と思った矢先にはすでに冷たい。
氷に触れた時に似ている。
覚悟を決めてひとおもいに巻きつく枝を握り締めると、思い切り力をこめて引っ張った。
引きちぎる?これを……?!
……どうしよう。正直、気が引ける。
如月姉弟は別として、自分以外に見えていないモノ。
きっとこれは、現実的には…存在していないものなのだと思う。
しかし無駄にリアリティに溢れている。
何だか異臭さえしてきそうな程に………。
植物が腐って、ぬめりをおびてそうなソレに触るのは…ちょっと嫌だ。
などと戸惑っていると、眉間に皺を寄せた奏が不機嫌そうに口を開いていた。
「ちょっと待て。それって絵真に負担はないんだろうな?」
「今、正に、鈴さんを苛んでる災いを受ける事になるだろうね」
さも当然とばかりに言い捨てた綾人の言葉に、奏は自嘲気味に笑った。
「どうりで…。客間じゃなくて絵真の部屋なわけだ。絵真がぶっ倒れるの前提の負担か。運ぶ手間が省けるもんな。ほんと用意周到で吐き気がするよ」
これが先程、奏が問いただしてきた[この部屋の意味]の答えなのか。
如月の2人は、鈴矢の身体に纏わりつくコレは災いだという。
そして私に、ソレを取り除いて欲しいと望んでいるのか。
「元はと言えば籠女である時近から滲み出た災いだろ」
「雪…!もうほんとお前は……っ!!」
痛みに顔を歪ませた久世君が、咄嗟に額を押さえる。
天音君の言う通りだ。
これが私の身から滲み出た災いだというならば、返して貰わねばならない。
心配してくれる奏には申し訳ないのだが、負担など生きているだけで否応なく受ける身なのだ。むしろ今回は、これから訪れる苦しみに対し覚悟が持てるだけ有難いとさえ思う。
だから私の懸念は別のところにあった。
椿の姫を通さずに、直接私が災いに触れていいものなのだろうか。
もし引きちぎる事が出来ず、事態がもっと悪い方向にいってしまったら?
「心配しないで。災いが完全に染み付いても、それ自体で死ぬ事はないんだ」
身を前に乗り出し私の顔を覗き込んだ綾人君は、そう言うと珍しくニコッと微笑んだ。
「そういうものなの?」
もしかしたら綾人君なりの気遣いなのかもしれない。
きっと彼は[失敗を恐れるな]と励ましてくれているのだろう。
「ただ死んだ方がマシだって苦しみが延々と続くわけだからー…自ら命を絶つだろうけど」
………全然違った。
一体、どこらへんが[心配しないで]なのだろうか。
結局、最悪の事態には変わらないではないか。
私は1つ大きな溜息をつくと、正面に座る久世君を真っ直ぐに見詰める。
「私、やってみようと思う。どうすればいいか…わからないけど」
頼りない言葉にも関わらず、久世君は優しく笑ってくれた。
「オレも…どうしたらいいかわからないんだ。だから時近さんに託す事にする」
「うん」と小さく頷く。
そろそろと手を伸ばすと、両肩に温かい感触が訪れた。
きっと奏が肩を支えてくれているのだろう。
その温かさに励まされる様に、更に手を伸ばす。
私の指先が、災いの鎖に触れた。
熱い?!と思った矢先にはすでに冷たい。
氷に触れた時に似ている。
覚悟を決めてひとおもいに巻きつく枝を握り締めると、思い切り力をこめて引っ張った。