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「おはよー…」




「あ。 おはよ!瑞姫っ」





月曜日———。
教室に着いて、杏里の後ろ姿に挨拶をすると。
杏里は振り返って笑顔を返してくれた。





「ってか瑞姫。 …なにかあった?」




「え? なにかってなに?」




「えー。 んーなんか、嬉しそうって言うかなんて言うか…」






嬉しそう…か。
わたし、嬉しいのかな?





わかんないけど。
あの人気って言うかモテる城川くんの素の姿をわたしだけが知ってるっていうのが。
なんだか嬉しいのかもしれない。





「あ。 忘れてた」





わたしはボソッと呟く。
壁側の1番後ろの席の城川くんは、後ろのドアに近くて。





先週の木曜日から、後ろから入って、寝てる城川くんに挨拶したんだけどなあ。





ここ何日かはなんだかいっぱいいっぱいで、前のドアから入っちゃって、自然に挨拶できなかった。





「そうだ! ねえ、瑞姫」




「ん?」




「瑞姫のポジションね?

もしかしたら……トップかも」





トップって…フォワードだよね?
フォワードって………。





「え⁈ と、トップ…⁉︎

わ、わたしが…っ?」






攻撃のポジション。
なんでわたしがそこなの……。





絶対、無理。





わたしになんかできっこない。
だって、まだ全然上手くないもん…。





「まだ、わかんないけどね?

ほら、1学期の終わりに引っ越したメンバーがいるって言ったでしょ?」




「あぁ…、わたしと入れ違いの?」




「そうそう。
その子、蘭とふたりでトップだったの。

だからもしかしたらーって思って。
ほら、あたしたちは今さらポジションは変えない気がするしさ…」




「嘘、でしょ…。

わたしになんか、無理だよ」




「でもさ。やる前から諦めちゃダメだよ。

攻めるのが苦手でも、蘭へのアシストとかすればいいし。

それにまだ、わかんないよ」





そうだよね…。
やる前から諦めるのはよくないよね。





だけど…、でも…。
お願いだから違ってほしいと思ってしまう自分がいる。