「ほれ、送っていく」
「…うん」

 静哉が、私に向かって大きな手を差し出してくる。
 気が強くて、それでいて寂しがり屋で、恐がりで、ぼ-っとしていることが多い私。そんな私を守ってくれるのは、いつも隣にいてくれる静哉だった。そう、小さな頃から…。

「ねえ、静哉」
「…ん」
「…眠い?」
「…なわけねぇじゃん」

 嘘ばっかり。
 
「嘘。死ぬほど眠い」

 やっぱりね。
 分かるよ、静哉のことなら。
 な-んでもね?

「…俺ん家まで帰るのだりぃ…。ちょっと、家寄らせて…」
「へ?…あ、うん、いいよ」

 めちゃくちゃ近いのに。
 静哉の家。
 でも確かに、すごく眠そう…。
 私の家まで来ると、静哉は自分の家かのように玄関を開け、
「すんません、静哉っす-。お邪魔しま-す」
 と眠たそうに良いながら入っていった。
 …と、ここでいつもなら
「あらあらあらあら、また来たの、静哉くん?また今日も疲れてるのねえ、どうぞどうぞ」
 なんて、お母さんが出てくる…はずなんだけど。

 …ちょっと?
 いないじゃん。