「桂汰ちゃん、別れたんだって?彼氏と」

 …人が悩んでいることを、何も気にすることなく口にする、そんな人が多い。
 仁志と別れてから、毎日のように、たくさんの人から言い寄られている。そして、断っての繰り返しだ。

 「…もう、やだ」

 なんで、こんなんなんだろう?
 手洗い場で、ため息をつく。
 前を見ると、鏡が私を映していた。
 …自分で言うのも、変だと思う。
 だけど、同級生の中では、わりかし容姿端麗な方だと思う。そう思うようになったのも、周りの人から言われ続けた結果なのだけれど。
 この容姿がなければ、こんな気持ち、抱かなくて良かったのだろうか。
 嫌な気持ちになって、自己嫌悪に陥って…。

 「…死んじゃおっか」
 
 お昼休みの中庭。

 「な-に言ってんの?」
 「へ?」

 不意にかけられた声に、びくりと体を震わせて声のした方を見た。