「他の花についても目を通したけど、特にメジャーなものを一つ二つしか書いてなかったみたいだね。で、僕の伝えたかった意味、だけど」


 何だと思う?と尋ねる眼差しに返せるものが見当たらず、つい目を泳がせた。そもそも私は石楠花の他の花言葉など一切知らず、心当たりなど並べることもできない。
 誤魔化すようにパスタを口に運べば、彼はふっと瞼を下ろす。当てずっぽうでさえ答える気がないことを察したらしい。


「石南花は元々高山植物で、入手するにはかなり危険が伴うんだ。あと、葉は有毒で、グラヤノトキシンなんかを持ってる」


 手に入れてるまでも、手に入れてからも怖いもんだよね――芹人はそう笑ったけれど、そんな植物を二週間に一度人の家に送り付けていたのは、誰だったか。


「そしてそんな石南花の花言葉には、危険、警戒、なんてものもあるんだ」


 パスタを食べ終えたらしい彼は、残ったスープをスプーンを使わずぐっと飲み干す。終わったのだろうか。返す言葉を探して、自分の引き出しを手当たり次第に開けて行った。

 ご馳走様でした、と手を合わせた後で、部屋を視線で一巡した彼。もう慣れてしまったが、それでも改めて見回せば随分な部屋だ。


「……つまり、芹人が伝えたかったのも、それ?」


 もう直ぐ君を攫う、警戒しろ、そういった意味だったのだろうか。漸く腑に落ちたところだというのに、独り言のように続いた一言。


「まぁ、それだけじゃないんだけどね」

「え?」


 続きを求めるように漏らした言葉、しかしそこで言葉は本当に途切れてしまった。寧ろそちらの方が本命だろうと直観しながら、だからこそ食い下がることもできず。

 どうせシャクナゲは、それ以上でも以下でもない。