「それに、軟禁なんて言っても、私には拘束具も何もついてない。芹人に従ったのは、私の意思。……納得してくれた?」


 礼を躊躇う理由などないのだと、私なりに説明してみる。

 ここを出てどうすべきか後先考えなければ、先ずここから逃げ出そうという選択肢もあったのだ。そうしなかったのは、私の意思に他ならない。


「うん、まぁ……そっか。あ、それより昼は何食べたい?取り敢えず、さっき買ってきたもので作れる範囲でだけど」


 そうは言うものの、却々大量に買い込まれた食料は、大抵何を作るにも困らない数だった。私が何を注文しようと困らないようにだろうか。

 私の家では、何かと洋食が多い。というのも、母も妹も洋食派且つ父は少々食に無頓着、和食を目にするのは週に一度あるかないか。

 そんな中一人和食を好む私は、当然二人に遠慮してそれを言い出せない。ここは、我儘を言ってしまってもいいのだろうか。


「……肉じゃが」


 昼から何を言っているんだろう、自分自身そう思う。更に、面倒な子だと思われる恐怖心もあった。

 そんな中絞り出した声は矢張り小さく、いっそ聞こえてなければいいのにと想ったりもして。


「ん、肉じゃが?了解」


 やけにあっさりとした了承の声に、安堵を通り越して泣きそうになる。

 手伝わせて、と一言零せば、笑顔と共に返ってくる答え。並んで立つキッチン、まごつく私の手元に、優しい声。

 途中で胃が空腹を訴えたものの、美味しい肉じゃがが出来上がった。