リビングを通過して、やっとのことで重い鉢植えを庭に出した。偶々お母さんがガーデニングが趣味だったため並んだ鉢植えはそれぞれきちんと手入れされているけれど、いい加減数が多すぎる。

 一つ、二つ…ええと、今回でもう五つ目になる鉢植え。お母さんはそろそろ庭に植え替えないとねぇ、なんて呑気に言っていたけれど、私からすれば気味悪さは増す一方。


 ――お母さんはどうでもいいんだ、私のことなんて。


 届く花束の送り先の名前は、決まって他の誰でもなく私の名前。真意を気に掛けることもしないお母さんに、私はこんなことを思うようになってしまった。

 いや、それはそんなに最近のことではなくて。何の才能にも恵まれなかった私と違って、妹はコンクールで何度か賞をもらうくらいにはピアノが上手い。

 生まれつき絶対音感を持つ彼女は、最近では作曲に手を伸ばし始めた。本当に、私とは大違い。


 そんなことを考えながら、ぼんやりと五つ並んだ少しずつ大きさの違う鉢植えを眺めていると、玄関のドアが開く音がした。誰かが帰ってきたのだろう、意識は直ぐそちらに向かう。


「ただいまー、美波。今日買いすぎちゃったから、キッチンまで運ぶの手伝ってくれる?」

「おかえり!はいはい、今行くねー」


 帰って来たのはお母さんだったらしい。庭を出て窓を閉めた私は、春のどこか温い夕陽をカーテンで遮った後に玄関まで小走りで向かう。