数十秒程の時間が過ぎたところで、ほっと息を吐いた彼は、表情筋の力も同時に緩めた。先程までの硬い表情が嘘のよう。
反対に私は酷く困惑しているのだけど、それにさえ気づいているのか怪しいところ。
また立ち上がってキッチンへ向かい、次はどこかの棚から何か探しているらしい。時々、あれ?とか、おかしいな…なんて声が聞こえてくる。
少々の時間が経過した後に、戻って来た彼の手に握られていたのは、……カッターナイフ。
頭に過った可能性は二つで、どうしても最悪の状況を優先して想定してしまう私は、痛いのだろうかなんてやけに冷静な不安を抱く。
しかしその予想に反して、彼の取った行動は、もう一つの可能性の方だった。
「ごめん、痛かっただろうね…手首鬱血してる」
解放されたばかりの手首に、労わるように触れるその手が私には痛くて、息までも堪えた。続いて足首も解放され、私は晴れて、自由の身となった。――のだが。
「何で、さっきの返事信用したの?」
当然残る、この謎。あの反応からして、何らかの方法で私が嘘を吐いていないという確証を得たのだろうけど、その方法が分からない。
だが、この問い掛けに対して満足出来る答えは返って来ず、曖昧な笑顔で有耶無耶にされて終わった。
反対に私は酷く困惑しているのだけど、それにさえ気づいているのか怪しいところ。
また立ち上がってキッチンへ向かい、次はどこかの棚から何か探しているらしい。時々、あれ?とか、おかしいな…なんて声が聞こえてくる。
少々の時間が経過した後に、戻って来た彼の手に握られていたのは、……カッターナイフ。
頭に過った可能性は二つで、どうしても最悪の状況を優先して想定してしまう私は、痛いのだろうかなんてやけに冷静な不安を抱く。
しかしその予想に反して、彼の取った行動は、もう一つの可能性の方だった。
「ごめん、痛かっただろうね…手首鬱血してる」
解放されたばかりの手首に、労わるように触れるその手が私には痛くて、息までも堪えた。続いて足首も解放され、私は晴れて、自由の身となった。――のだが。
「何で、さっきの返事信用したの?」
当然残る、この謎。あの反応からして、何らかの方法で私が嘘を吐いていないという確証を得たのだろうけど、その方法が分からない。
だが、この問い掛けに対して満足出来る答えは返って来ず、曖昧な笑顔で有耶無耶にされて終わった。