その時−−


『ハルカ』


…?


どこからかタロウの声が聞こえてきた。


『どうか、自分を責めないで欲しい』


「だけど…」


『僕は1ヶ月前に眠り始めた時から本当は…とっくに死んでるんだ…。』


「え…?」


『だけど、どうしても君に会いたい、君の願いを叶えてあげたいという僕の願いを…神様が叶えてくれた。だから、犬としての僕はこうして動けなくても、人間の姿を借りて魂だけ移動することができたんだよ。…ハルカがピンチの時だけ、そしてハルカの人生最大のピンチを救うまで…って条件でね』


「そんな…それじゃ…」


『…本当に本当のお別れだよ…。』


「…いやだ…いやだよ…」


『僕は十分過ぎる位生きたよ。これからは…空からだけど、ハルカのこと見守ってるからね…。だからもう泣かないで、ハルカ』


「……タロウ…」


『君を守ってくれる王子様に…出会えるといいね。僕も安心して眠れるよ…』


「ううん、あたしにとっての本当の王子様は…タロウだよ…」


『ありがとう、ハルカ…。』



”さよなら”


そう聞こえて、タロウは静かに目を閉じた…。