「恵梨の気持ち……ほんとは、気付いてた」
「え……」
それは、予想外の言葉。
気付いてた?私が、木村君を好きってことに……?
「い、つから」
「……多分、夏休みの時には、もう」
夏休み?
「待って……私、夏休みの時は木村君のこと──」
「恵梨が認めなかっただけで、本当はもう好きだったんじゃない?」
問いかけるような言葉で、でも断言するかのように渓人君がそう言う。
夏休みの時は……なるべく木村君と話したくなくて、関わりたくなくて必死で。
でもそれは、告白されたからだと言い聞かせてた。
木村君が私に告白してきたから、その意味を考えあぐねて、戸惑って、だから避けてた。
……でもそれも、好きだったから?
好きだったから、怖かったのかな。
確かに木村君の事は、ずっと好き。嫌いになったことなんか、実のところ一度も無いんだと思う。
でも、夏休みの時には少なくとも、私の心は渓人君に大きく向いていたと思うのに。
渓人君は、私が気づけなかった心の傾きに、気付いていたの?