見たところ特に変わった様子は無かった。自分がどうしてここにいるのかも覚えていたみたいで、起きてすぐに「子供は?」と聞いてきたし。
真っ先に庇った子の心配をする所が、木村君らしい。
私は涙を拭きながら、そっと渓人君の事を見る。
もう、誤魔化せない。
渓人君の事を傷つける事になっても、私はもうこの気持ちを誤魔化せないんだ。
「渓人君」
「……なに?」
「お話が、あるの」
スカートの裾をぎゅ、と握りながらそう言えば、渓人君は悲しそうに笑った。
「それ、聞きたくないって言ったら?」
「……なんとしてでも、聞いてもらう」
「……ほんと、大事なことに関しては強情なんだから」
いいよ、向こうで話そう。と人気のない場所に案内してくれた渓人君。
そこで私は渓人君と向き合って、口を開いた。
「渓人君、私、木村君が好き」
私は、彼が好き。
いつの間にか?──ううん、きっと、ずっと好きだった。
裏切られたと思っても、心の底から嫌いにはなれなくて。だから再会した時、簡単に心が揺さぶられた。