「あの子隠し撮りなんかして、相当あなたのこと好きなのね」
「いや……」
なんと返したらいいのかわからなくて、口ごもる。
木村君、こんな写真いつの間に……。
「……恵梨ちゃんにはもう、恋人がいるみたいだけど……今だけ、少しのあいだでいいから、理貴のそばにいてあげて?」
ごめんなさいね、と謝る木村君のお母さんに、謝るのはこっちの方ですと言いたくなる。
ごめんなさい、私、本当は。
本当は──。
泣きそうになるのをぐっと堪えて、病室に足を踏み入れた。
「木村君……」
真っ白なシーツの上で、点滴の管に繋がれた木村君。
そっと近づいて顔をのぞき込むと、少し声をかければ今にも起きそうな程、穏やかな寝顔をしていた。
「木村君、皆心配してますよ……」
だから、起きて。
つう、と生暖かい感覚が頬を伝う。
私は、ボロボロと溢れる涙もそのままに、力なくシーツの上に横たわる木村君の手を握って、祈るように自分の額に当てた。