だから八つ当たりする気も起きなかったわ、と悪戯っ子のような表情を浮かべる木村君のお母さん。
少しいつもの調子を取り戻してきたのかな、とホッとした。
「……恵梨ちゃん、わざわざ来てくれてありがとうね。理貴なら、中で点滴して眠ってるから……様子、見てきてもいいわよ?」
「あ……、」
「というか見てきてあげて?理貴もきっと喜ぶ」
ね、と微笑む木村君のお母さんに、断ることはできなくて。
はい、と頷いて中に入ろうとした時、ちょっと待ってと引き止められた。
「みて、これ」
そう小声で言い渡されたのは、木村君のスマホ。
え、と困惑して木村君のお母さんを見上げると、お母さんは躊躇いなくその電源をつけた。
そして、私にだけ見える覚悟で映った画面には──。
「これ、恵梨ちゃんでしょ」
「……っ、」
いつ撮ったのか。
そこにはボーッと窓の外を眺める私が映っていた。