それでも、打ちどころが悪かったら、とか。
嫌な方向に、考えてしまうんだもの。
だけどそんな不安は、木村君のお母さんによって打ち砕かれた。
「命に別状は無いって、お医者様が」
その言葉に、ほっと辺りが安堵の空気に包まれる。
私はほっとし過ぎて、力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった。
よろりとよろけた身体は、どうにか渓人君によって支えられたけど。
「恵梨、大丈夫?」
「う、ん……ちょっと、安心しただけ」
ごめんね、と謝って渓人君から離れる。
でも、命に別状がないならどうして、そんなに曇った顔をしてるの?とまた不安が募りだした。
「まだ……目が覚めてないんですか?」
もしかして、と恐る恐るそれを口にすれば、木村君のお母さんが弱々しく頷く。
「結構強く打ったみたいで、何針か縫ったの。……起きた時もしかしたら、なにか障害が残るかも、って」
「……っ、」
「リハビリで治るようなものならいいけど……記憶障害とかになったらって思うと、不安で」