リュティアは泣きながら、視線をそらした。

「…わかっています。あなたがもう、私のことを妹としか見られないことを。だから私は、旅に出ます。あなたのそばにいるのは、辛すぎるから…」

「ち……」

カイの喉からやっと声らしい声が押し出されてくれた。

だが、頭がついていっていない。

―ちょっと待て。

「ちょっと待て。妹としか見られないって…誰がいつ、そんなことを言った」

「カイ…が…………―――――――え…?」

リュティアの表情が何かに気が付いたような、驚いたような表情に変わる。きっと、誰もそんなことを言っていないことに気が付いたのだ。

カイにはわけがわからなかった。

リュティアの言葉の意味を頭は半分も理解できていなかっただろう。

けれど心はすでに理解していたのだ。だからこの時カイは突然、こみあげる激しい愛しさを感じたのだろう。

その愛しさに突き動かされ、カイはたまらずに腕を伸ばす。

気が付いたら、抱きしめていた。

嵐のように激しく、抱きしめていた。

「ばかを言うな…この気持ちは…! そんなに簡単に、心変わりできるようなものじゃない…!」

「…………え………?」

この時リュティアが頬を朱に染めたのを、彼女をきつく抱きしめていたカイは見ることができなかった。だが、カイにはそれがわかっていた。自分のものではない鼓動が―リュティアの鼓動が伝わってきたからだ。それが激しく早鐘を打っていたからだ。

やっとこの時、カイはリュティアの想いを理解した。