坂を下り終えて角を曲がろうとしたところで、先頭にいた咲良が立ち止まった。
「え、おい、急に立ち止まんなよ」
「シッ、待って、変な人がいる…」
「はぁ??お前とうとう妄想癖まで出てきたわけ?手に負えねー…って、うわ、まじだ」
コウキも角から顔だけを出して確認すると、焦ったような顔で振り向いた。
敦も身を乗り出してチラリと見ると、こっちを向いて呟いた。
「うん…綾芽関係の人っぽいね」
綾芽関係の人、すなわちやくざや組関係の人と言うことだ。
「うん、そーかも…めっちゃ強面だし…ん?え?あれ、こっち向かってきてる?」
「え、マジじゃん、え?大丈夫なの?ヤバくね?」
そう言われて私ものぞくと、全く見覚えのない見るからにヤクザの様な男性が歩いてくる。
「え、あんなのうちの組にいないよ…」
「し、知らない人!?ならやばくね?!ちょ、逃げた方がよくね?!こっち見てるし!!こっち来るし!!つかでけぇ!!歩くのはえぇ!」
「えっ!!こうき!まって〜っ!!おいてかないで〜!!!っきゃわ!!」
「っぶね…」
逃げようとしたこうきを追いかけて転けそうになった咲良を抱えていたのは、いつの間にこっちまで辿り着いたのか、さっきの“変な人”だった。