そう言われて、もう一度記憶を掘り返したけれど、やはり桐山玲音は出てこなかった。




「どんなやつなの...?見た目は」




「...いや、とにかく眼がなぁ...眼がいいんや。目玉だけくり抜いてとっておきたいくらいに。...口は縫い付けてやりてぇくらい達者やけどな。」




「...」





そう言うことじゃなくて、髪型や風貌の特徴を聞いたつもりだったのだけれど、まるで検討違いな答えが返ってくる。





「まぁそいつが、「華城つったら綾芽がおるんか」ゆうてな...それがどないしたゆうたら、「綾芽につかせてくれるんなら組入らんでもない」なんてぬかしよるもんでな」





「な、なにそれ...」




「いや、俺も最初ふざけとるんかと思って、「綾芽は組事には関わらせとらん、お前は用無しやで」ゆうてどついたったら、「それでも構わん、綾芽の傍に置いてくれるなら入る」なんてまた抜かしよるもんやけ、綾芽の昔切りよった男かと思ったんやが...違うんか?」





「そんな男いないし…」



まずこんな家柄だから寄り付く男も限られてくるなかで、そんな男は全く心当たりがない。





「そうか、ほんならただの綾芽のストーカーかいな。」





父は一人で勝手に納得したように煙草をふかした。