「足のリハビリの時に、一緒に頑張ってくれた作業療法士に憧れているだけ。私もあの人たちみたいに人の役に立ちたいだけだよ?」


リハビリは苦しくて、痛みと常に隣り合わせで、泣いてばかりだった。

そんな私を励まし、一緒に泣いたり笑ったり、その温かい存在は本当に嬉しかったから。



「うん。いいなって思う。俺はずっと野球ばっかしてたから、来年の今、何をしてるか。

ただ大学に通うだけにはなりたくないし、ね」


太一は、喋りすぎたと言わんばかりに下を向くと咳払いをした。


それは、心のホンの一部分を吐露しただけだったんだろうけど。



「私はそんな風に真面目に考える太一を尊敬してるよ。本当に何事にも手を抜かないって難しいもん」


それが太一を苦しめているようにも思えるけど、不器用ながら真っすぐ頑張っている太一は好き。


「ま、奏の次だけどな」


「あはは。奏は尊敬しないってば」


二人でそう他愛もない話で盛り上がっていたら、坂の上で奏が待っていてくれていた。


信号が青になると、私たちは急いで奏の元へ駆け寄り、三人で帰った。