「居ない。俺が女子と話すの苦手なの知ってるだろ?
バックだって最近やたら交換迫られて奏と交換するぐらいなんだからさ」
私の言葉を遮り、そうまくしたてる。
頭を掻いてるのは、ほとほと困っている証拠みたい。
それなら、ちょっとだけ肩の荷が居りそう。
「腰に縫い付けるのが伝統なんだって?」
ニヤニヤと肘でつつくと、太一はすぐに美緒ちゃんの仕業だと分かったのか、苦笑いした。
「このまま誰にも貰わなかったら、母さんにお願いするとこだった。助かるよ」
「っぷ。おばちゃんなら張り切りそうだね」
「でも、今、ちょっとピリピリしてるからさ」
また信号に引っかかり、待っている間にぽつりと言う。
「進学も大事かもしれないが、俺はみんなの期待や仲間との二年間があるから今は目の前を優先したいんだ」
太一らしい言葉に頷くと太一は真っすぐ前を向く。
「深雪はちゃんと進路決まっているから、良いなって思う」
「いい?」
「目標、もう持ってるじゃん」
太一の言葉は、短い分、その裏の気持ちを読み取らななきゃいけないことがあるのでちょっと首を傾げてしまう。