こんな一輪で機嫌なんて、
そもそも私が何に怒っているかなんて分かってないのに。
そうは思うのに、一輪のオレンジ色の花は可愛くて、綺麗で。
困り果てたこの真面目君が愛しくて。
分かっている。きっと私には見られたくない、そんな姿もあるんだって。
分かっているのに、素直になれない。
なんでも教えて欲しい。
「我儘で、ごめん。ありがとう」
「俺も、ごめん」
謝ったままなんだか二人とも下を向いていると、急に太一がしゃがみこんだ。
「足、無理しないほうがいいから、乗って」
「! 違うの、これ、その、唯の策略なの!」
両手をブンブン振って事情を説明すると、また苦笑した。
「そんな事せず、堂々と一緒に帰ればいいのに。二人なら変に思われないだろ」
「あら、太一は試合に変化球は使わず、ストレートだけで勝てるの?」
くるりと方向転換すると、太一がやや前を歩き、私がその後を追った。