駅までの道で、信号に引っかかった。

パン屋さんの窓で、髪型や化粧をチャックする。

奏は、ちょっと化粧が濃くて、スカートが短いような、今時の子とばかり付き合っていた。

私も元から色素が薄かった髪を先生に注意されない程度に染めて、薄くアイラインを引いて、グロスを塗る。

バスケをやっていた頃とちがって、奏の好みに合わせたつもりだった。
――奏には届いてなかったけど。

でも慣れてる。慣れてると言うか、女の子として見てもらえてないし。


信号が変ったからグロスをハンカチで拭きとると、太一がいる駅に走った。






駅の改札口は、土曜日の昼と言う事もあり、私服の学生が多くて、きょろきょろ探してしまった。
なのに、太一はすぐに私を見つけて手を振ってくれた。


「深雪」


「太一!」
首元ぐらいまで手を上げて、こちらに微笑むのは太一だ。


「――何を笑ってんの?」

「ぷっ 今日ね、学校で太一を古き良き日本男児って先生が褒めてたの」

「何だ、それは」

そう控え目に目を細めて笑う、この坊主頭の凛とした幼馴染についついまた笑ってしまう。

部活が終わってそのままで来たはずなのに、学ランの一番上まで締めているのは流石と言うしかない。