「へぇ。去年もレギュラーで投げてたくせに」
「やっぱりキャプテンともなるとプレッシャーがあるのかな。あはは」
そう言って、空いていたから一番後ろに二人で乗った。
ちょっと歯切れが悪かったものの、『あ』っと呟くとカバンから雑誌を取り出す。
浜松高校の指定カバンは、ウチの高校のカバンと違って革のスクールバックだから高級感があって可愛い。
ウチも青のスクールバックは可愛いのだが、布なので雨に濡れると教科書に被害がでるから嫌になる。
「ほら、深雪ちゃん、これなら一緒に作れるよ」
雑誌の最初の特集に、運動部の彼への応援プレゼント特集なるものが載っていた。
アタックしたい彼へ、両想いの彼氏へ、最後の試合を応援したい憧れの人へ。
「なるほど、タオルや差し入れ、そしてお守りねぇ」
「去年のキャプテンさんは腰に彼女から貰ったお守り縫い付けてたの! 何か伝統らしくて、お兄ちゃん彼女いないから、渡して告白しちゃおうって子、けっこういるんだよ~」
確かに硬派な太一にアプローチできるのはこの機会しかない気がする。
そうか、やっぱり太一はもてるんだ。
テレビや話を聞いていると、何だか遠い人のように聞こえる。
「応援にいけないなら、これ作ったらどうかなって思って。美緒はタオル作るけど、深雪ちゃん、勝利のお守りどう?」
「ええ!? 私が!?」
ビックリして声を荒げると、前に座っている人たちが一斉にこっちを見た。
申し訳なくて、何度も頭を下げていたら、美緒ちゃんがクスクス笑う。
「私が作ったら、太一義理固いからしちゃうよ。もし本気で作った子に悪いじゃん」