「勝手に飲まないでよ」
「いいじゃん。そんな怒るなよ」
人が注いだ麦茶を美味しそうに飲み干しながら、私を見る。
「俺の誕生日、計画は順調?」
「……いちいち確認するなんてちっさい男ね」
ふんっと鼻であしらいつつも、まだ何も考えてないから内心は焦ってたりする。
「ぶー。もしまだ決まってないなら行きたいところあってさ」
「うん?」
「太一と三人で、さ、行きたいんだ」
『それ』、は嘘だとすぐに分かった。
優しくふんわり笑うから、すぐ嘘だと分かった。
私が、応援に行きたいとか色々気にしていたの、奏にはとっくにお見通しなんだ。
「……ありがとう」
「ぷっ。なんでそこで御礼なんだよ」
「……」
「よし。そろそろ帰る頃だろうし、太一には俺から言っておくから」
「わ、ちょっと!」
奏は流しにグラスを置くと、縁側から出て行く。
そして自分の家に寄らず、そのまま太一の家の庭に侵入していった。
「奏ちゃんは見た目はイケメンになったけど、中身は変らないわよね」
そんな奏の行動を見て、母はゲラゲラ笑うけど、奏だって変って行ってるんだから。
自転車のブレーキの音がして、坂を太一が降りて帰って来たのだと分かった。
だけど、今行っても、テレビを見たことを言って、太一のプレッシャーになってしまいそうだから止めておく。
でも。
久しぶりの三人でのお出かけ。
……とっても楽しみ。