「もう、あんたたち煩いわよ。終わっちゃったじゃない」

お母さんがタオルを取りあげてくれてけど、テレビは既に地区予選の日程についての場面に切り替わっていた。

最後の方、見逃したじゃん! 録画だから良いけどさ。


「本当に奏は碌な事しないんだから」

「お前、可愛くねーぞ!」

んべ、と舌を出してそのまま冷蔵庫を開けて麦茶を取り出す。
どうせ、奏に可愛い態度取ってもとらなくても変らないし。

「でもねえちゃん、高校入ってから急にオシャレし始めたぞ。彼氏居るんじゃないの?」

「啓太!」

「あはは。いたらすぐに教えてやるからさ」

奏の分も注いでいた麦茶をプツリと途中で止めた。この無神経! 馬鹿!


「たいちゃんも、深雪も浮いた話ないのよねぇ。初恋同士だから二人とも付き合わないかしら」


「お母さん、太一が野球選手になるかもとかミーハーなこと考えてるでしょ?」

「うふふ」

「まあまあ。それより応援行くんだから日程確認しとくんだぞ」


うちの家族はすっかり太一ファンになったらしく、試合に家族総出で行くらしい。

……自分の家族でありながら恥ずかしい。


「それ、俺の分?」

キッチンまで現れた奏が、ひょいっとグラスを持ち上げた。