「深雪、もう大丈夫だぞ」
そう言われて顔を上げると、後は下って家の前に到着だった。
汗が頬を流れながらも暗くなった、月明りの下、奏は優しく笑っていた。
「松本、俺にだけは厳しいんだよ」
「それは、あんたがバスケ部部長で、松本先生が顧問だからだよ」
目を付けられているというより、目をかけてもらってるんだから。
「別に二人乗りぐらいいいじゃん。深雪もバスより俺のチャリの方が乗り心地いいだろ?」
「バスの方がいい」
――嘘。
ずっと抱きしめていたい。
「ひっで」
――酷いのはどっちだよ。
好きでもないのに、こんなに特別扱いして、諦めさせてくれないんだから。
酷いのは、――そっちじゃない。
「しっかり捕まってないと落とすから!」
「ちょっ」