「やっぱり」
体育館に着くと、体育館横のグラウンドと繋がる通路に、テントが三つ組み立てられていた。
野球部とバスケ部と、サッカー部の一年生たちが片づけをしている。
「ちょっと! 奏!?」
サッカー部と話している奏に詰めよると、こっちを見てにっこりと笑った。
「お、悪いな。面倒な印刷頼んで」
「全然面倒じゃないでしょ!? 私だって手伝ったのに!」
夏休みに向けて熱中症対策に、涼しい通路に運動会などで使うテントを組み立てる。
体育館もサウナみたいに熱くなるからテントを借りて休憩するのに、マネージャーの私が何も手伝わないなんて。
「うーん。でも人手は足りてたから。ありがと」
ポンっと肩を叩くと、そのまま腕で額の汗を拭いながら体育館に入って行く。
「……ばか」
叩かれた肩が熱い。
確かに私は、あの時怪我をして、半年近くリハビリをした。
膝の皿が割れたのだから、手術でワイヤやボルトを入れたりして今でも運動は制限されているけれど。
わざと30分、私に部活の時間を遅く伝えるなんて。
なんでそんなに奏の優しさは分かりずらいんだろう。
なんで、そんなささやかな優しさでも胸が熱くなるんだろう。
ちゃんと分かってくれてるから、私の気持ちは冷めないままなのに。