一試合目はその動揺からか、ウチのバスケ部がとった。

浜松に勝てたのはなんと5年以上ぶりらしく、皆、タオルで顔を拭きながら少し嬉しそうだった。
向こうは、大事な高校野球の決勝戦の日の練習試合。

身が入らないのかもしれない。


「あの、深雪先輩」

応援席に居た一年生の一人がこっそりと私を呼んだ。


「ん?」

「偵察に入ったら、どうやら浜松と対戦する高校の投手、父親がプロ野球選手の息子らしいです」

「は?」

「無名高校から、実力で甲子園に行けと、母親の旧姓で乗り込んだ期待の一年生エースだって」

いきなり漫画みたいな展開を話されて面食らいながらも、一年生が何を言いたいのかを待つと、一年も興奮して少し早口でまくし立てた。


「つまり、会場の空気が完全に向こうへ飲み込めれているんです。努力のルーキーにって」



――――完全に向こうへ。

それはつまり、太一が率いる浜松が追いやられていると。

太一だって毎日毎日が頑張って努力してきたのに!?

浜松の応援席が半分以上減ったのは、きっと野球に収集されたんだろう。


「で、開始早々太一先輩がヒット打って一点入ってから、出てきてないらしいです」

「出てきていない?」


「一年ルーキーなんかと戦わせるかと馬鹿にして浜松はエースを下げたのかってすごく反感勝ってて。でも俺中学から知ってるから太一先輩がそんな事しない人って分かってます」