「奏が深雪を幸せに出来ないなら、俺なら出来るよ。そう思ってる」

「そんなこと思ってないもん」


「奏の気持ちは疑っても、俺の気持ちは疑わないだろ?」


バタバタと靴のかかとを引きずる様な、個性的な足音に関先生が此方に戻って来たのだと認識した。


「泣き虫で、殻に閉じ籠もって、自分に自信が持てなくて。
だから俺達を心から純粋に応援してくれて、甘えてくる深雪を、――俺らはちゃんと知っているから」


「……太一」

「泣かせてごめんな」


関先生に見られないように立ち上がり、こっそり出ていこうとしたけど、振り返ってしまった。


泣きだしそうな、優しい、太一の笑顔を見たくて。