「肩、酷いの?」
溢れる涙をゴシゴシと腕で擦ると、太一はため息を吐いた。
「あんま上手く上がらなくてさ、調子が悪いだけ。大丈夫だよ」
目、擦るなよ、と両手を捉えられて、ちょっとスッとした日本男児と評判の顔が近付いてきた。
「――俺が出来なかったことなんてないだろ? ノーヒットノーランだって達成した」
「それで無理したの?」
「後は奏から深雪を奪うことぐらいだよ。出来ないのは」
「とぼけないでってば」
誤魔化そうと、私が逃げていた話題を持ってくるのは意地悪だけど、だけど私だって譲れない。
「ホームランを、打つよ。誰もが息をのむような、圧倒的なホームラン」
「私、試合見に行かないよ」
震える声を奮い立たせてそう言うと、太一は眩しげに笑った。
「そっか」
それだけ言うと、上を向いて目を閉じた。