「大事な決勝が日曜に控えているからね、って崎谷さん!」

靴下も靴も履かず、そのままレントゲン室を飛び出した。

後ろから先生が「そんなに走れるなら大丈夫だね」って呆れていたけれど。


リハビリ室の向こうの廊下には歩くスペースがある。
そこではベンチもあって、今日のトレーニング目標や経過などを話し合う場所でもあるけど、そこに太一と関先生、椎田さん、太一のクラスの先生や監督の先生まで賑やかなメンバーになっている。


「先生、太一君は?」

「凪沙の肩は?」

「日曜は?」

「いっぺんに質問しないで~。何で誰も彼を見ていなかったの?
こんなに痛めてたら、気づくはずよー」

おっとりした口調で困惑した先生は、肩のサポーターの巻き方を太一に指導していた。

太一は涼しげな普段通りの顔で座っている。


「自分の限界ぐらい分かりますから大丈夫ですよ」

そんな太一の言葉に胸を締めつけられた。