今まで大切な物をいっぱいくれた二人を、嫌いになんてなれない。
好きにしかなれない。

だけど、縛り付けたままじゃ前に進めないんだ。



「決勝ね、見に行かないことにする」

「何で!? 」

「バスケ部の試合が終わってからじゃ、途中からしか見れないでしょ?
家でビデオ見ながら最初からみたいもん」


「本音?」

訝しげな奏が尋ねてくるけど、それは太一にも言おうって思ってたことだから頷いた。

「優しさに甘えてたら、二人とも嫌な思いするでしょ? 
私が奏に居るくせに幸せそな顔しなきゃ、また太一に心配かける」


『おれとけっこんしようよ。みゆき』


その言葉は嘘じゃない。
私の気持ちも嘘じゃない。


「今日は連れ出してくれてありがとう」

「お、おう!」

改めて礼を言うと、奏は照れくさそうに笑う。
私の言葉にちょっとだけ、気も晴れたらしい。




「試合、勝ったら今度こそチューだからな」


「あはは。浜松に勝ったことは?」


「ない。……ない」


奏は少し考えてから、言いなおした。


「3ポイント決めれてら、チューだ」


志が低くなったことに、私もケタケタ笑った。