こんな風にさらりと言えちゃう奏が羨ましいし、好きだ。

頭で考えないで思った事をすぐに言っちゃえる奏が。


「深雪は頭の中でぐるぐるしすぎじゃない? そりゃあ俺だって最初はびっくりしたけど、なんとかなるんじゃないかなって考えてる」


「なんとかって?」


「バスケで浜松高校に3ポイントガンガン決めて、深雪のハートを鷲掴みにしたりとか?」

考えていないのはやっぱり奏らしい。


逆に負け犬根性の染みついた自分が嫌だった。

「私、多分もう太一に気づかれた時から、奏の事諦めてたんだよね」

氷だけになったジュースをズズズと吸い上げながら、足をブランブランさせる。


「敵わない恋を太一が応援してくれて、それが嬉しくて。いつの間にか、太一に慰めて貰いのが嬉しくて、いつかは太一と付き合うのかもしれないって夢見てたんだと思う」

だから、奏が私のことを好きだとか言った時は本当にびっくりした。

思い通りになんてならない奏に、自分の気持ちが揺れるのが悔しくて。


「奏は、いつも背中を追いかけていたい。振り返って優しく笑ってくれる暖かい奏が好き」


「背中って!」

奏がオチャらけて笑ってくれるから、私も笑う。


「太一は、私の気持ちを一番わかってくれる、大切な人だよ」

奏はきっと分からない、繊細な部分まで理解してくれる、優しい人。


色も形も、選べない。

好きになられるのも、好きになるのも苦しい。

ただの幼馴染のままの『好き』じゃいられない。