ボーリングして、クレープ食べながら茜色の空を背に歩く。

そんなのんびりとし時間も、家の目の前にきたら途端に物足りなくなった。

「じゃあ、俺がプレゼントは預かっておくから」

「うん。お願いね」

奏は家が隣だし、弟の部屋と奏の部屋は窓を開けて50センチ。

当然、弟の隣の部屋の私の部屋だって丸見えだし、来ようと思えばあいつは簡単に入って来る。


道路挟んで目の前の太一の家のぐらいの、そんな近すぎない距離が良かった。

太一は頷いてほほ笑むと、私が家に入るのを見送ってから自分も家に戻って行く。


口数は少ないけど、穏やかで優しくて。

私は、奏を好きという秘密が太一に知られてから、ずっと甘えてきた気がする。
こんなに好きなのに、ずっとこの位置から動かない臆病な私を、太一はいつも見てくれている。


だから私は安心して、奏に片思い出来るんだ。



だから私は此処から動けないんだね。



そう思うと寂しくて、なんだか自分がちっぽけに見えた。