その言葉だけで十分だった。
分かってしまった。
気づいていた。
知りたかった。
覗いてはいけなかった。
様々な考えが交差する。
「深雪は奏が好き。佳奈も深雪が好き。
俺は二人が好き。
それだけだろ?」
ポンポンと頭を撫でられる。
真実は、複雑に考えなければそうだ。
太一が正しい。
でも、それが私は苦しいんだ。
――欲張りたいんだよ。
「私が奏を好きでも」
その先の言葉は、聞けなかった。
太一も、聞こえないふりをした。
私と太一は、言葉を飲み込めば、ずっと大切な幼馴染で要られる。
我儘なのは、私の心だ。