「……そう」
「できた?」
私の手元を見て太一の声が明るくなる。私は小さく『うん』と言ってそのまま渡した。
「あとは糸切っていいよ」
「サンキュ。助かった。母さんや美緒には見せたらからかわれるからさ」
苦笑しつつ、ユニフォームを眺て目を細めた。
愛しげに、お守りを縫い付けた部分をなぞる。
そんな顔、ズルイ。
そんな顔、止めて欲しい。
「何であんな嘘、ついたの?」
私の言葉に、太一の目が微かに動いた。
「最後の試合で、やっぱり最初に駆けつけて、最後まで居てくれたのは太一だよね」
太一は、私と奏が上手くいけばいいと思ってそう言ったのは、薄々感づいていた。
なのに、聞いて確認したい私はズルイのかもしれない。
「深雪は、それを知りたいの?」
太一は真面目に答えてくれた。
哀しげに笑いながら。
「深雪は、本当は壊したいの? 俺は守りたいのに」